歯の病気にかかりやすい人・かかりにくい人

 いくら歯を磨いてもむし歯になってしまう。いくら治療してもまた腫れたり痛くなる。言われた通り懸命に歯ブラシをしても歯周病が治らない。そんな方も多いと思います。
 私たちがさまざまな関わり合いの中で生きているように、お口の中もさまざまな関わり合いでできています。お口の中にはたくさんの細菌がすんでおり、その種類や量によって、また、唾液の性質や量、タバコなどの嗜好品、年齢、歯ブラシの仕方、食事の時間などさまざまな因子の関わり合いで、いくら磨いてもむし歯や歯周病になってしまう人、磨かなくてもお口の中が健康に保たれる人とに分かれています。
 
 したがって、そのさまざまなリスク因子の状態を調べることにより、リスクの高い人は低くなるよう、定期検診を短めに行なったり、食事指導や歯ブラシ指導を行なうことで、疾病の予防が可能です。

 また、リスク検査を定期的に行い、どうしても低くならない場合には除菌システムを行い、お口全体の細菌数を下げる必要も出てきます。
 治療の前にこれらのリスクを調べ、それを少なくすることで、治療がより有用なものになります。
 もしも、リスクが高いまま治療を行っても、治したそばからまた疾病がおこり、治療にかかる時間や手間暇が無駄なものになってしまいます。

 

リスク検査で調べること


う蝕経験:う蝕のある人、特に歯の間にう蝕のある人はう蝕になりやすい傾向があります。

細菌検査:むし歯を作るS. mutans, また、歯周病の原因菌であるP. gingivalisを主体に調べます。

フッ化物の使用:欧米のようにフッ化物を上水道に添加したり子供のころから積極的に使用いている所はう蝕の数がかなり少なくなっています。今までフッ化物を使っているかどうかで、歯の表面構造が違うため、むし歯になりにくくなります。

唾液検査:お口の中の酸が消失するための、唾液の量と緩衝能を測ります。食事の後、酸性の時間が長いほど、歯が溶けやすくなります。



年齢・性別:年齢が上がると、免疫力が減少したり唾液量が減るために、細菌が増えやすくなったり、また、女性ホルモンの減少により、カルシウム代謝が悪くなります。

プラーク蓄積量:汚れは細菌の食べ物になります。プラークなど歯の汚れが多いと細菌数も増加しますので症状も悪化します。

飲食回数:飲食後お口の中は酸性になり、しばらくして、アルカリ性へ戻ります。飲食回数が多ければ酸性の時間が増えますので、歯が溶けやすくなります。

プロ-ビング:歯の周りの歯肉が深いと、そこにごみがたまり、細菌の温床になり、歯周病を悪化させます。その量を測ります。

ブリーディング:細菌が多い場所はその細菌を退治しようと白血球や免疫細胞が増えて、出血しやすくなります。ブリーディングで血が出やすいほど細菌がすみついているので、その状態を調べます。

喫煙本数:喫煙すると毛細血管が縮小し、血液の循環が悪くなり、酸素や栄養がいかなくなったり、免疫力が落ちます。また、ヤニのついた場所を体はとげと同じ異物と判断して、攻撃を仕掛け、病気を悪化させます。

リコール状況:リコールによる定期検診が多いほど、口腔内を清掃し清潔に保てますので、病気を悪化させずにすみます。

歯周病進行度:歯周病で歯を支えている骨が一度なくなるとその部分の骨はほとんど再生しません。したがって、なるべく骨のあるうちに治療した方が予後は良くなります。その骨の量を調べます。

危険因子:そのほかにも缶飲料を飲んだり、歯列が悪かったり、あめを持ち歩いていたりとリスクとなる因子がいくつかあります。


Q & A

Q.いつやるの

A.治療前に行なえばリスクの低い人は小さなむし歯は経過観察したり、リスクの高い人は下げてから治療したりといろいろな方法が選択できるようになります。
 また、リコール時に行なえばリスクがあがってきたら悪くなる兆候ですのでそれなりの注意ができます。できれば治療前、治療後、リコール時に行なえばかなり病気を予防できます。

Q.費用は?

A.残念ながら、予防処置は保険がききませんので実費となり、基本料で8400円かかります。他に菌種を増やすとその分の費用がかかります。

Q.リスクがなかなか下がらないときは?

A..どうしてもリスクが下がらないときには薬を使って除菌し、細菌数を減らすことでリスクを下げます。除菌システムは、この細菌叢をレーザーやクロールヘキシジンという薬を使い破壊し、新たな細菌叢に変えることを目標としています。
 将来的には飲む乳酸菌のように健康を保てる細菌叢の導入もできるようになるのでしょうが、現在は破壊するだけで、新たに入る細菌の種類によっては同じ細菌叢に戻ることも考えられます。
 したがって何度か繰り返して行なわなければならない人もでてきます。

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