おいしく食べて楽しい人生を送るために

予防

 食べることは生きていくうえで毎日の大きな楽しみですし、最後まで幸せを感じる大切なことです。そのためには、自分の歯を大切にするとともに、それがうまく機能するようにしなくてはなりません。

 平均寿命が延びるにつれ、私たちの歯と口の機能も長持ちさせなくてはなりません。

 足がうまく動かなくなってくのと同じように、口腔機能も弱くなっていきます。早めに口腔機能の低下を予防し、リハビリしていくことが大事です。

生涯 自分のお口を使って楽しい人生を

平均寿命がかなり延びてきました。その中で自分の歯やお口を使って食事をすることは大きな楽しみであり、生きていく栄養をとるために必須なことです。他にも呼吸や会話やコミュニケーションをとるための表情を作ったりとお口や歯はたくさんの役割を担っています。
  
 私たちは何気なく毎日お口で食事をしていますが、生後直後は母乳で栄養をとり、その後、お口で物を食べられるようになるには哺乳という原始反射から摂食嚥下という大事な機能を習得していかなければなりません。障害をもった子供ではその機能を体得することが難しい場合もあり、その場合には習得のお手伝いを必要とします。
 また、高齢になり認知症や脳血管障害の病気となると、やはりその機能がうまく働かなくなり、お口から食べ物をとることが困難になると、胃や血管に直接栄養を与えることが必要となる場合もあります。なるべくそうならないように摂食嚥下指導や予防が大事です。

 お口は歯とそれを取り囲む歯肉や骨、ほほや舌から出来あがっています。それらをうまく使って私たちは食事をしています。歯の病気や歯肉の病気、あるいは潤滑液の役割や抗菌作用もある唾液の出方、嚥下にも関わる舌の動きなど様々な状態を把握しながら、一生自分のお口で楽しく生活できるよう治療や予防を行っています。

なるべく自分の歯で食事をするために

なるべく自分の歯は削りたくないし、抜きたくないと思います。歯がなくなると残った歯にその部分の負担がかかりますので入れ歯やインプラントでその部分を代用することになります。しかし、入れ歯では自然の歯に比べてかむ力がかなり低下しますし、インプラントも導入して20年以上たちかなり不自由なく機能しますが、それでも免疫学的な問題を完全にはクリアしていません。できれば自分の歯が一番です。

 歯の喪失の原因としては、歯周病やむし歯や歯の破折、その原因となる残っている歯が少なくなること、かみ合わせの不具合、お口の中の清掃不良、歯の神経をとること、唾液の減少、タバコなどがあげられます。それを防ぐためには、若いころからの対処や予防が必要です。

 単に痛い歯や腫れを治すだけではなく、どうすれば歯が長持ちし、ご自分のお口で美味しく食べられ幸せな生活を送れるか、それを目標としています。

歯周病で困っていませんか

 歯周病とは歯を支える歯周組織の病気で、徐々に歯を支える骨がなくなっていき、しみたり歯がぐらぐらし、最後は抜けてしまう病気です。部分的に歯を支える骨がなくなる場合には歯に原因がある場合がほとんどで、いわゆる歯周病とはお口の中全体の歯の周りの骨がなくなっていくのを呼んでいます。したがって多くの歯をなくす原因の一番手が歯周病なのです。

 その歯周病の原因はP.gingivalisという細菌の感染と歯についた汚れ、喫煙などです。この細菌は蚊みたいに血の中の鉄分を求めて、歯と歯肉を結合する組織を壊しては体内に侵入しようとします。その時に一緒に他の細菌も侵入し、その防御反応として生体はその部分を攻撃するとともに、上皮という壁で囲い骨を吸収させ危険地帯から遠ざけることで細菌の侵入を阻止しようとするのです。この時に手術で上皮の壁を取り除けば細菌の侵入を助けることになります。このP.gingivalisは動脈硬化を起こした血管壁や心筋梗塞で亡くなった患者さんの心臓壁からもみつかっています。
 この細菌は年齢とともに徐々に保有率が高くなり、性病と同じような水平感染が考えられます。また、S.mutansというむし歯の原因菌は歯の表面を粘着性のあるテントの様な膜で覆うために、他のP.gingivalisのような新たな細菌の感染を防ぐことから、むし歯の多い人には歯周病が発生しにくくなります。


 したがって歯周病の治療においては細菌検査を行い、P.gingivalisを保有しているかどうかが大事なことになります。細菌検査は5分間ガムをかんでもらいでてきた唾液を採取し、検査施設に送るだけで判定することが出来ます。
 もし、細菌がいた場合には除菌することで、歯周病から開放されます。 腫れた歯肉を手術で切り取る方法も多く行われていますが、原因の細菌をなくせば自然の治癒力で健康な歯肉に戻ることがほとんどです。逆に原因がそのままでは再発を繰り返すだけです。
 また、タバコのような汚れは歯の表面に付着し、汚れた部分を生体は自分ではなくとげのように異物として判断するようになったり、ニコチン作用で血流が悪くなったりして、歯周病が治りにくいものになります。


 むし歯にならないために

一生懸命歯を磨いているのにすぐむし歯になっていきませんか。

 むし歯は細菌からでた酸で歯が溶けて穴があいてできます。お口の中にはたくさんの細菌がいて、ほとんどの細菌が酸を出します。ただ、お口の唾液の中を細菌が泳いでいるうちはそれほど悪さはしないのですが、細菌が歯にくっつきその栄養源となる食べかすや糖が加わると歯が溶けていきます。
 とくにむし歯菌といわれるS.mutansという細菌に、ショ糖のえさが加わると、べとべとした被膜を作って、それがテントのように細菌の繁殖の邪魔をしている唾液の侵入をさまたげ、歯についた細菌からの酸で、むし歯になって行きます。

 むし歯になりますと歯科医院で治療を受けることになります。ただどんなに優れた修復材でも天然の歯にかなうものはありませんし、歯の中の神経をとりますと栄養や免疫を担っている血液の循環もなくなり、結果として歯はもろくなり、生きている歯ほど長持ちはしなくなります。したがって、むし歯になる前の予防が大切なのです。

  むし歯になりやすいかどうかはむし歯菌のいるなし、ショ糖の摂取具合、唾液の量が大きく作用します。
 むし歯菌は 生まれてすぐに親から口移しでもらってしまうことが多いようです。むし歯の多い方はむし歯菌のいるなしを調べてあらかじめ除菌することをお勧めしています。
 また、ショ糖の制限やフッ素による歯質の強化がむし歯予防に有効です。同時に年齢の高齢化とともに唾液の量が減り、むし歯になりやすくなっていきますので、それを防ぐようなマッサージや対処法も大事です。
 
 大切なのは何が原因か見極めてそれを除去することです。たいていの病気は原因となる”とげ”を取り除けば改善されることがほとんどなのですが、余計なことをして病気を複雑にしてしまってることが多いようです。当院ではデータに基づく思いやりのある治療を心がけています。

参考文献

日本口腔衛生学会「歯周病・う蝕における細菌検査の有用性の検討」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh/62/4/62_KJ00008158183/_pdf

歯界展望「歯周病におけるアジスロマイシンの投薬効果」

日本歯科医師会雑誌「免疫機構からとらえる歯科臨床」

渋谷 医療法人社団俊英会斉藤歯科医院 

西船 斉藤歯科医院

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