歯科医院の感染症対策

治療方法

 令和3年10月、第5波を過ぎて2年ぶりぐらいにコロナ患者さんが少なくなってきています。

 いろいろな対策や制限が出されましたが、ほぼ4か月周期で増加、減少を繰り返し、対策は単にそのスピードに対して影響していただけのようです。

 医学の最初に細菌の増殖期、減退期について習わされます。コロナウィルスにおいてもほぼその原則通りに動いただけのようです。

 歯科医院は感染の危険性が高いといわれていましたが、結果は院内での感染は少なく杞憂に終わったようです。もっとも歯科医院では過去から常に感染症の危険にさらされ、それへの対応がとられていた事が功を奏したようです。ここでは歯科医院の感染症対策について触れてみます。

感染症の歴史

 戦後間もないころは、皆の栄養状態も悪く、水も汚染され、細菌やウィルスの繁殖は旺盛で、う蝕や口の中の傷から容易に細菌が感染し、腫れが舌の下やのどの方に広がると、呼吸ができなくなったり、血の中に混ざった細菌が心臓等に付着し、なくなる方も多くいました。歯科では口腔外科が治療の最前線を担っていました。

 その後、抗菌剤や種々の薬剤、細菌の発見等医学の進歩により、なくなる方もかなり減少しました。

 しかし、感染症を完全になくすことはできず、まだグローブがないころには手洗いと消毒薬による手指消毒が普通で、肝炎ウィルスにより、3割ぐらいの歯科医が肝炎にり患していました。それもかぶせ物を入れたり義歯を作成する補綴部門や歯並びを治す矯正の先生方に多く見られました。もっとも日本人ではB型肝炎患者が母子感染を通して非常に多い状態で、その影響が多分にあったと思われます。

 現在では学校の予防接種による使いまわしの注射針から肝炎が広まったとして、賠償請求が行われていますが、B型肝炎ウィルスは体液、唾液からの感染が主流で、血液を介して感染が広がるC型肝炎(当時はまだウィルスがわからず、非A非Bウィルスと呼ばれていました)とは異なり、注射針からの感染はまれであり、裁判所の判断が正しかったとは言えず、たぶんいろいろな事柄から総合的に無理に判断された結果と思われます。

 明治から昭和にかけては結核で多くの人が命を落とし、今はかなり減少しましたが、まだ、結核は消滅はせずに火種は残っています。そもそも生き物は食うか食われるかの世界で、決して平和な時期は訪れないものと思います。いかに予防し防御していくことが大事なのです。

ウィルス孝

 COVIT-19の難しい話についてはいくらでも検索できますので、簡単な話だけ。

 生き物というのは自分で繁殖することが前提ですが、ウィルスは自分では繁殖できず、他の細胞の中に遺伝子を送り込み、その設計図通りに体を作らせ子孫を残していくもので、いわば、生き物と機械の境界線上のものです。そのため普通の細菌よりかなり小さく、電子顕微鏡でやっと見える程度ですが、その体は生き物というよりロボットのような幾何学的形状をしているものがほとんどです。

 またウィルスは他の細菌の中に寄生するように入り込み繁殖しますが、そのウィルスによってその標的細胞は異なっています。肝炎ウィルスは肝細胞ですし、AIDSのウィルスはヘルパーT細胞という白血球の1種類の細胞です。インフルエンザウィルスは呼吸器系の細胞ですし、顔やおなかにぼつぼつが出来て電気が走るようにかなり痛みがでる帯状疱疹ウィルスは神経細胞が標的です。

 ほとんどは死滅することなくその細胞に長く住みつき、生体が弱まったときに再び活性を取り戻し悪さをします。

 また、自分で飛んだり動いたりはできません。空気中を漂ったり、飛沫により飛んだりするだけで、本来かなり弱いものです。それでも感染してしまうのは非常に小さくどこを漂っているかわからないからいつもまにか感染してしまうのです。

 今回のコロナウィルスも完全に死滅してしまうものか、どこかの細胞に眠っているのかはまだ不明です。

標準予防策

 歯科医院においては今はほとんどの治療で十分な手洗い後に使い捨てのグローブを着用し、ガウンを着て治療をします。

 マスクはウィルスを通さないN95マスクを使用し、帽子と患者さん用のフェースシールドをします。

 使用器具については切削器具にいたるまですべてのものは使い捨てか、滅菌済みのものを患者さんごとに替えて使用します。

コロナ対策

 さらにコロナ対策としては、入室時に体温測定と異常がないかの問診を行っています。

 また、予約時間に余裕を持たせ、診療室や待合室が密にならないように時間調整をしています。

 感染経路としてはほとんどがエアロゾル感染で、換気でエアロゾルを廃出することが感染予防に大事になります。室内に残ったエアロゾル対策としては、歯科診療室のにおいを除去するのに以前より使っていたオゾンが、におい粒子とほぼ同じ大きさのウィルスも分解するため有効です。

 訪問診療では持ち運べ充電器で使用できるオゾン発生器を使用したり、目的に応じていろいろなオゾン発生器を使用しています。

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